付言事項で実現する「最後の意思表示」
今回は遺言に記す「付言事項」に焦点を当てます。
法的拘束力がないにもかかわらず専門家が記載をすすめる理由とは何なのでしょうか。
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遺言内容・趣旨の明確化が可能
記載することで相続開始時に法的効力が期待できる「遺言事項」と異なり、遺言書の末尾に記載されることが一般的な付言事項についてはその内容が法的拘束力を持つことはありません。
例えば「相続分の指定」などは遺言に記載することで法的拘束力を持ちますが、「葬儀の方法の指定」などについては遺言者の意思を伝えるにとどまります。
にもかかわらず行政書士等専門家が付言事項を重宝するのは、付言事項には遺言内容や趣旨の明確化に役立つという側面があるからです。
シンプルで強力な遺言の泣き所
自筆証書遺言の記事で述べたように、遺言書はなるべくシンプルに仕上げる方が強力になります。
しかしシンプルな記載で誰が見ても共通理解を得られる遺言を作成することは、そう簡単なことではありません。
相続人のうちの1人に対して明らかに公平感を欠く相続割合を指定していたり、相続人以外の者を受贈者として財産のほとんどを遺贈するような遺言の場合、「なぜこんなことを書いたのか」を相続人が理解できなければ、遺留分侵害額の請求を起こすなど”争族”の発端ともなりかねません。
付言事項によるフォロー(補足)が重要
このような場合、付言事項として遺言者がなぜこのような財産の分け方を望むのかを記載し、さらに相続人にはくれぐれも遺言者の気持ちを理解してその最後の意思表示を尊重してほしい旨を記しておくと、円滑に相続が進むケースが多くあります。
付言事項が円満相続に導いた数々の実体験に基づいて、行政書士等専門家は付言事項の記載をすすめているのです。
付言事項の記載による遺言内容や趣旨の明確化が可能
感謝の気持ちを伝えるなどエンディングノート的な役割
エンディングノートは遺言よりも取り掛かりやすいイメージもあることから、興味を持つ方や実際に作成した方も少なくないでしょう。
書き方を解説する書籍・雑誌も数多く出版されていて、遺言書作成の前段階として準備する方もいます。
法的拘束力がないという類似点
エンディングノートの作成をすすめる専門家もいますが、その際に必ず前置きする決定的な欠点は「法的拘束力がない」ということです。
エンディングノートに記載した内容が相続人等を法的に拘束することはないのです。
この点、遺言における付言事項と類似しているといえます。
家族への感謝の気持ちを伝えるという役割
エンディングノートには普段口に出して言えないような家族に対する感謝の気持ちを改めて伝える役割もありますが、これを遺言書の付言事項に記載することももちろん可能です。
伝えたいことがたくさんあったり内容が多岐にわたる場合には遺言とは別にエンディングノートなどの形で表す方が分かりやすいかもしれませんが、遺言の一部として付言事項において家族への感謝の気持ちを伝えることもできるのです。
付言事項はエンディングノート的な役割も担う
「最後の意思表示」にはうってつけ
ここまでの付言事項のポイントは「遺言内容や趣旨の明確化」と「エンディングノート的役割」ですが、これらはいずれも相続人等遺言を受ける側にメリットがあることといえます。
遺言内容が明確であれば相続手続きがスムーズに進みますし、家族への感謝の気持ちを感じることで遺言者をしのぶこともできます。
付言事項が遺言者に与える安らぎ
これらに加え、付言事項を記載することは遺言者にとってもメリットがあると考えられます。
遺言は「最後の意思表示」であるということは以前の記事においても述べましたが、付言事項を活用してこの最後の意思表示を心置きなく行うことができるのです。
「最後の意思表示」には付言事項の活用を
遺言者が表現したいことは相続分の指定といった遺言事項に限られないかもしれません。
家族への思いを伝えたり、財産をどのように活用してほしいかという希望を伝えることも、遺言者が最後に伝えておきたいことである可能性もあります。
そのようなケースにおいて付言事項を活用すると、法的な遺言を作成するということを超えて「遺言者の最後の意思表示をする」という真の目的を達成することができるのです。
遺言者の最後の意思表示に付言事項は欠かせない
まとめ
今回は付言事項を専門家がすすめる理由を考えました。
- 遺言内容・趣旨の明確化に有用である
- エンディングノートと同様の役割も担う
- 「最後の意思表示」には欠かせない要素
適切な付言事項を記載することで、相続人等にとっても遺言者にとってもより満足のいく遺言書が実現できるでしょう。