相続財産となるものならないもの

今回は相続の対象となる「相続財産」に含まれるもの・含まれないものを簡単に紹介していきます。

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相続財産の基本原則

何が相続財産に含まれて何が含まれないのかという点を整理するために、まずは基本原則を確認しておきましょう。

原則:被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続財産となる

被相続人の財産といえるものは基本的に相続財産であるとするのが原則です。

そして次の段階として、ここから例外的なものを除いていく作業を行い個別ケースでの相続財産を確定していきます。

ポイント①

原則として、被相続人の一切の権利義務が相続財産となる

相続財産に含まれないもの

相続財産に含まれないものとしては、一身専属権や祭祀財産などがあります。

個人に密接に関係する「一身専属権」

一身専属権」とは被相続人の「一身」に「専属」していたものを指し、個人の人格や才能・地位などと密接に関係している権利義務をいいます。

つまり一身専属権に関しては被相続人が行使または履行することに意義があるため相続というシステムになじまないのです。

雇用契約による労働債務や芸術作品等を作成する債務、生活保護受給権や著作者人格権なども一身専属権に含まれます。

相続財産とは異なる取り扱いをする「祭祀財産」

祭祀財産とは、祖先を祭る目的にかかる財産をいい身近なものでは仏壇・仏具、お墓や家系図などが含まれます。

これらの財産は慣習上の観点などから相続財産とは別に取り扱われることになっており、具体的には祭祀主宰者がその承継者となるのが基本です(詳しくはこちらの記事も参照ください)。

ポイント②

一身専属権祭祀財産相続財産とならない

相続財産となるかどうかの判断が分かれるもの

最後に、相続財産となるかの判断がケースバイケースとなる財産をいくつか紹介します。

受給権者が定まっている死亡退職金・遺族年金

死亡退職金遺族年金と呼ばれるものは基本的には相続財産となりません

これらは受給権者つまり金銭の受取人が指定されていることが通常であり、相続人ではなくその受給権者が権利を有するからです。

具体的には、法律や内規もしくは就業規則などに受給権者の範囲や順位が定められているので、その決まりに従って受給権者が固有の権利として取得します。

受取人により取り扱いが異なる生命保険金

生命保険金に関しても原則として保険金の受取人が固有の権利として取得するので、相続財産とはなりません

しかし受取人が被保険者自身である場合は相続財産となります。

誰が受取人であるかによって取り扱いが大きく異なりますので、保険契約書などで契約内容を確認する必要があります。

特別受益とされる場合に注意

これらの財産は基本的に相続財産となりませんが、問題となるのは特別受益として扱われるケースです。

特別受益については別の記事で解説しますが、ここで大切なのは、

  1. 死亡退職金、遺族年金、生命保険金の受給権者が相続人の中に存在する
  2. その額が相続の公平性を乱す可能性がある

というような場合、相続人の事情などを考慮して特別受益として取り扱われることがあるという点です。

特別受益者はその分だけ相続分が減ってしまいますので、このようなケースでは生命保険金等財産も相続財産とみなされているといえます。

【特別受益についての記事はこちら

ポイント③

受給権者や受取人の確認のほか、特別受益についても考慮する必要がある

まとめ

今回は相続財産となるものとならないものを確認しました。

  • 原則:被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続財産
  • 一身専属権、祭祀財産相続財産に含まれない
  • 死亡退職金、遺族年金、生命保険金特別受益とみなされることもある

相続財産か否かについては個別の判断が必要になるケースも多いですが、まずは上記3点の基本を押さえることが重要です。