書く前が肝心!自筆証書遺言3つのポイント(おまけ付き)

今回は「自筆証書遺言」を書き始める前に押さえておきたい3つのポイント(おまけ付き)を紹介します。

本記事では具体的な書き方や執筆中の注意点ではなく前提知識に焦点を当てることにします。

コンテンツ

目的を明確にし、大枠を固める

まずは目的を明確にし、遺言書作成の大枠を固める作業に時間を費やしましょう。

目的なく遺言書を作成する方はいないと思いますが、ここで大切なのは目的を「明確」にすることです。

遺言によって「何を実現したい」のか

たとえば、「配偶者には〇〇、長男には〇〇、長女には〇〇を相続させたい」というだけではまだ目的が明確になっていません。

遺言書を作成する目的とは、どんな財産を誰に相続・遺贈したいかではなく相続・遺贈をすることによって「何を実現したいかです。

上記の例でいえば、配偶者や子に各財産を相続させるのはなぜなのか、それこそが遺言書作成の目的です。

真の目的を見極めることが「第一歩」

「財産をなるべく公平感のある形で相続させて家族円満に過ごしてほしい」

「各相続人で異なる今後の人生設計に自分の財産を生かしてほしい」

このような想いこそ、遺言書作成の目的であるべきです。

目的が明確であり大枠が固まっていると、想定外の事態(例:どう分けても財産が公平に分割されない、家族構成に変化があったなど)が起きた際にも原点に立ち返って柔軟に対応することができます。

意外と軽視されがちですがなぜ遺言書を作成するのか」を深く掘り下げて真の目的を見極めることは非常に大切な「第一歩」です。

ポイント①

遺言書作成の目的を明確にし、大枠を固めることが遺言の「第一歩

財産は全て棚卸しする

目的を明確にし大枠を固めたら、遺言書に書き残すべき財産を洗い出します。

財産調査はなるべく詳細に

基本的に、遺言書に全ての財産を記載する必要はなく「その他一切の財産」といった記載も可能です。

しかし、書き始める前の財産調査の段階においてはなるべく詳細に財産を把握するべきです。

誤解を生まない遺言書

たとえば、家財道具は家屋(不動産)に含まれるものとしてあえて遺言書に記載しなかったけれども、家具の中に高価なものが含まれていたというような場合、その帰属が当然に不動産の取得者となるかどうか判断が難しいケースなどが考えられます。

単純な記載漏れを防ぐという意味合いだけでなく、誤解を生む余地のない遺言書を作成するためには財産の棚卸し」にもしっかり時間を充てて取り組むべきです。

ポイント②

財産の棚卸しは、「記載漏れの防止」や誤解を生む余地をなくすという意義がある。

シンプルな遺言ほど強力

エンディングノートやメモ書きでなくわざわざ手間をかけて遺言書を作成するのは、遺言には法的効力があるからです。

「なるべくシンプルに書き上げる」という原則

しかしたとえ有効な遺言書を作成していたとしても、その内容の解釈に手間取るものであれば遺言者の意思が反映されない可能性もあります。

つまりどれだけ目的を明確にして財産調査に時間をかけた遺言書であっても、記載内容が複雑であったり人によって解釈が分かれるものである場合、遺言者が意図した通りに相続が行われないケースもあり得るのです。

このような事態を回避するためには「なるべくシンプルに書き上げる」という原則を順守することが大切です。

「シンプルな遺言ほど強力」である

遺言の解釈が問題となるのは「遺言者の意思がどちらなのか判断がつかない」「この書き方だとこういう解釈もできる」というように、客観的判断がつきにくいケースが多いです。

「ただし、~」「~の場合は、この限りでない。」といった法律文書でよく見かける言い回しは可能な限り避けるべきであり、一つの条項が長文になってしまう場合にはなるべく条項を分けて、一条項一義」的なルールを決めて執筆することも有用でしょう。

他にも、付言事項に遺言者の意思をはっきりと示しておく、専門化にチェックを依頼する、といった対策が考えられますが、大前提としてシンプルな遺言ほど強力であるという点の理解が大切です。

ポイント③

なるべくシンプルな書き方を心掛けることで強力な遺言書になる

(おまけ)専門家は必要?

最後に、自筆証書遺言作成に当たって専門家は必要かという点について。

筆者の主張:専門家は必要

行政書士として遺言業務を受任している立場上、完全に客観的な意見とは言えませんが、筆者は自筆証書遺言作成に専門家の助けは「必要」であると考えます。

本記事で紹介した3つのポイントはぜひとも実行していただきたいですが、これら全てを遺言者単独で行おうとするとなかなか大変です。

特に財産調査シンプルかつ法的効力のある遺言書の作成という点は、真剣に取り組むほど膨大な手間と時間がかかります。

本来の目的を達成するための選択

費やす手間や時間の膨大さが原因で途中で投げ出してしまうのはまだしも、途中で妥協して中途半端な遺言書ができてしまったときには相続トラブルの可能性を生み出してしまうという最悪のケースにもつながりかねません。

自筆証書遺言の利点として「自分で気軽に作成できる」という点がよく紹介されますが、筆者は専門家に依頼して一緒に作成することで本来の目的を達成できるのではないかと感じています。

おまけ

専門家と共に自筆証書遺言を作成することは本来の目的を達成するための選択肢の一つ

まとめ

今回は自筆証書遺言を書き始める前に知っておきたい3つのポイントを紹介しました。

  • 目的を明確にし、大枠を固める
  • 全ての財産を棚卸しする
  • シンプルな遺言を心掛ける

以上3つのポイントを確実に実行することが大切です。

作成に要する手間や時間をなるべく抑えたい方には、専門家に相談・依頼するという方法も選択肢の一つになるでしょう。